来 歴

 
秋の眺め


そんなにも
至難なこころみを
いくたびか繰り返し
繰り返すことで
自分であり続けようと
ここからは見えない空の彼方を
自分ひとりの土めざして
漂い続ける一粒の種子を思う

その種子が
黒い大きな目を見はり
もっと高く飛ぼうと
どんな羽で風をたたいたのか
そしてなぜ
長い時を賭けて
自分の土を選ぼうとするのかを
思いめぐらしてやまない

枯れたかに見えて
豊かな命を抱えている種子
それなら沈黙も
ことばを告知する力
きざしと呼べるほどの
緑もととのわないまま
暗い空を翔る私のことばもまた

私は
私をはげます眺めを
長いこと見失っている
だから生れる前から生きて
自分ひとりの土へ
至難な旅をこころみる
あの賢いことばの種子を思う

黒い大きな目を見はり
拙い羽もて空をめぐり
いくたびとなく
口ごもり黙しながら
私ひとりの遠い緑の野めざして
私ひとりのことばの種子が
漂い続けて行くはてしない眺め

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